大阪杯といえば、近年ではオルフェーヴルの快勝劇が印象深いが、このレースの勝ち馬で何か一頭挙げろと言われれば、トウカイテイオーを外すわけにはいかないだろう。

皇帝シンボリルドルフの仔、トウカイテイオー。
その生涯は実に波乱に満ちていて、「稀代のドラマチックホース」として現在も語られることが多い。
無敗で皐月賞、ダービーの二冠を制しながら、骨折のために菊花賞を断念。
「親子三冠馬」という偉業は果たされなかった。

そのテイオーの復帰初戦が、1992年の大阪杯。
鞍上はそれまでの安田隆行騎手に代わって、ルドルフの主戦でもあった岡部幸雄騎手が務めることになった。

1番人気はもちろんテイオー。
2番人気に同期でクラシックでもしのぎを削ったイブキマイカグラ。
3番人気はメジロマックイーンと同期の実力馬ホワイトストーンで、他にも有馬記念馬ダイユウサク、「鉄の女」イクノディクタスなどが顔を揃えた。

スタートが切られると、イクノディクタスが先頭を奪い、それにゴールデンアワーが続き、テイオーは3番手に控える。
前半は13秒台と、スローに流れる展開となった。

残り1000メートルの時点でもイクノが先頭だったが、そこからレースが動く。
4コーナーを過ぎてテイオーが持ったまま先頭に並びかける。

直線でも手ごたえは鈍らない。
岡部騎手がほとんど鞭を入れることなく、テイオーは2番手のゴールデンアワーを寄せ付けず、ゴールイン。
実にあっけない復帰第一戦での勝利であった。

この楽勝劇は、桜が花開く阪神競馬場で「テイオーは花見をしながら走っていた」といわれるほどのものであり、着差以上に充実した内容だった。

ここから、テイオーは満を持して春の天皇賞に駒を進める。
待ち受けるのは、古馬ナンバー1で生粋のステイヤー、メジロマックイーン。
岡部騎手が「地の果てまでも駆けていくよう」といえば、マックイーンの武豊騎手は「こちらは天まで昇っていきますよ」と応酬するなど、戦前から「世紀の対決」として世間の一大注目を集めることとなる。
時まさに競馬ブームの真っただ中。
日ごろ競馬に無関心な人までもが目を向ける中、勝利の女神がほほ笑むのは、皇帝の子か、稀代の名ステイヤーか…。

写真は2008年、社台スタリオンステーションにて。